12月8日(水)は先の大東亜戦争開戦の日であります。その日に「田母神論文と自衛官の名誉を考える会」主催の講演会集会が靖国会館で開催されました。
13時半から16時までの間、英霊に対する黙祷から始まり、宮内代表挨拶、平間洋一先生来賓挨拶、宇都隆史参議員講演、岡田政典氏時評講演、協賛代表者挨拶等、密度の濃い内容でした。宇都参議員の講演は最近の尖閣問題を中心にこれからの日本の防衛について話していただきました。以下、講演・挨拶等の概要について下記に紹介いたします。
有益な集会終了後、近くの場所で懇親会が開かれ、参加者の懇親が一層深まりました。
1.宮内代表挨拶
全国各地からの参加ありがとうございます。先程、靖国神社の関係者との懇談で靖国神社境内で現政権の批判をしても構わないかと伺ったところ、「全く問題ありません」とご返事がありましたので、この集会においては安心して、質疑等活発にやっていただきたいと思います。
それではこれから話していただく3人の先生方を紹介します。最初は平間洋一先生です。平間先生は防衛大学の名誉ある一期生です。防衛大学卒業後、海上自衛隊の護衛艦長等歴任され、以降勉強され、法学博士になられました。各方面で講演、執筆活動をされていますが、最近ではNHK大河ドラマの「坂の上の雲」の海軍関連指導をやっておられます。次に平間先生の教え子でもある本日のメインスピーカーの宇都参議員を紹介します。もう一人の岡田さんは航空自衛隊退官後は防大生後輩のための諸活動をなされています。以上で紹介を終わります。
2.平間洋一先生挨拶
(まず宇都議員に一礼)
今、宇都君にお辞儀をしたのではありません。国会議員のバッジにお辞儀をしました。
「田母神論文と自衛官の名誉を考える会」の皆さま、本日は「暴力装置」出身者の私をお招きいただきありがとうございます。
私はこの暴力装置という言葉に、青春時代の熱い思い出があるのです。暴力装置という言葉ですが、これはドイツの社会・経済学者マックス・ウェーバーが軍事警察力を表現した学術的用語でした。しかし、この言葉をマルクスは『共産党宣言』、エンゲルスは『エルフルト宣言批判』、レーニンは『国家と革命』などで使用し、日本では1960年の共産党の「第8回大会で決議された『61年綱領』」にあります。 私は横須賀高校2、3年生にかけて、三浦半島地区の高校の民主青年同盟の委員長をやっており、三池の炭鉱騒動を支援し、「単独講和反対!Go home Yankee!」と横須賀、逗子、川崎の町をオート三輪の荷台に乗って叫んでいました。
管さんや仙石さんが小学生の頃です。そして管さんが東京工大で逮捕を逃れるために、第4列で安保反対とやっている時は、私は防衛大学を卒業し2等海尉で、大阪外語大学のフランス語研修学生でした。
当時、大阪外大は革マル系(日本革命的共産主義者同盟)の最も強いところでした。私たちフランス語科の学生は全くのノンポリでしたが、革マル系の学生に強制的に教室を追い出され、上本町8丁目の大学から中之島(扇町)公園まで、「安保、反対」「犬、死ね」と警察官を罵倒しながら革マル派の番犬に羊のように誘導され行進をさせられました。私も野次馬として2回ほど、最後列で参加し途中で消えましたが、その頃、管さんは東京工大学生として、第4列で頑張っていたのですね。私の一周遅れのランナーとして。
さて、宇都君ですが、私の防大教授時代の教え子です。私は海戦史と近代日本戦史を教えておりましたが、宇都学生は本来ならば航空史を受講しなければならないのに、越境通学(?)で私の教務を2科目も受講していたのです。当時、私は出欠の代わりに授業の終わりに、短歌、川柳、俳句を学生に提出させておりました。そして、退官時に約2000首の中から150首ほどを選び、「詩歌に見る防大生」という一文を書きました。その一文に宇都君の歌が3つも選ばれているのです。次の歌から宇都君の人物、お人柄が判るのではないでしょうか。
「帰り道 どんぐり拾って 秋を知る」
「秋深し 眠りも深し 防大生」
「いつもなら 気にかけないカップルも 今日はむかつく クリスマスの夜」
今日は「暴力装置」を支援してくださる皆さまや、成長した教え子に会え、感激の一日でした。ありがとう御座いました。
(平間先生の確認を受けて一部変更しております。12/24)
3.宇都参議員講演(骨子のみ)
http://www.youtube.com/UtoChannel#p/u/3/ak4Tkf_hoXg
(上記youtubeは宇都議員が7/26靖国神社参拝後のメッセージです。)
(1)平間先生のお付合い
防大生4年の時、「海戦史」と「戦時国際法」の授業を受けました。
・特に戦時国際法は大変参考になりました。
・平間先生からの印象は学者先生と違って、自衛官として経験された立場で実績を語っていただいたことが大変参考になりました。
(2)靖国神社をお参りして
・12/8は69年前、1941年12月8日の日本が米英に開戦した日であり、この日に靖国会館で講演させていただくことは光栄に感じています。
・先程、本殿でお参りしてその横にあった明治天皇の御製に感銘しました。
「ならび行く 人にはよしや おくるとも ただしき道を ふみなたがへそ(道)」
(人々よりは成功出世が遅れても、人として踏むべき正しき道を踏みちがへぬようにせよ)という意味であると思います。
(3)TPPについて
・日本の雇用、農業の衰退が予想されますが政府が十分に分析しているでしょうか?
していないと思います。乗り遅れるなの論理だけで進もうとしているのではないでしょうか。現政府に対して先の明治天皇の御製の本旨を見習ってもらいたいと思います。
(4)田母神論文について
・歴史的判断というよりは論文の文脈を捉えるべきです。
・69年前の先人は日本国家のことを考えて開戦の決意をしたことに勝手な判断をする人がいますが無責任です。
・命を賭けて戦った先人にも失礼ですが、今の自衛官についても認識不足が多々あるということを今の政府、世間に呼びかけたかったのだと思います。
(5)尖閣問題について
・今回の尖閣の中国漁船衝突事件は今まで政府が国を守るということを真剣に考えてこなかった付けが明るみになった事件と思います。
・この事件の大きな政治的汚点は那覇地検に全て責任を押し付けたこと。
・メリットは日本国民に国防の必要性について知らしめたこと。
(6)中国に対する今後の3つの対策
1.中国という国を正確に把握すること。
・政府共産党と国民のずれがある。
・経済発展を続け、軍事費を毎年増大している。
・国民は愛国心に目覚めつつある。
・中国政府にとって恐れていることは①民主化が進んで独裁政府に批判が出ること、②バブルが弾けて経済が下降することである。
2.日本の法的整備を進めること。
・戦後65年経つが自衛隊に関する法整備が未だに不十分である。
・自衛隊と警察の違いが明確でない。
・尖閣の中国漁船衝突事件は領海侵犯でありながら船長の罪名は公務執行妨害のみである。
・領海侵犯は日本の主権侵害であり、自衛隊の出動が必要であるが法律がない。
・「領域警備に関する法律」を超党派で現在検討中であるが、社民党再連合の擦り寄りによって、その検討が頓挫しそうである。
3.国益を明確にすること。
・日本にとって一番大事なことは主権と領土国土を守ることである。(経済発展よりも重要)
・国益上の優先順位を国家として決めてない。(世論任せになっている。)
・米国の優先順位
①国民の生存に関わる国益=国の存続=主権
②重要国益
③主要国益
④概念的国益
・戦後65年後の現在も日本国家が存在している。戦った先人のお陰である。
・100年後、200年後も日本が無くなっていないことが最も重要である。
・国民全体として考えなければならない。
(7)宣誓について
国会議員になって驚いたことがあります。自衛官は国家のために国家危急の時は身命を賭して戦うことを誓います。しかし自衛隊のトップである総理大臣を含めて国会議員は国家に対して宣誓がないのです。
国会議員になるときは選挙管理委員会から証書を「おめでとう」といってもらうだけなのです。(しかも秘書が代理で受けることもよしとされています。)しかも受領の際、壇上にある国旗に対して一礼する議員すら極少数です。
仙石官房長官は宣誓をしている自衛隊を暴力装置として「自衛隊を放置しておくと政府に向けられる危険性のある組織なのでシビリアンコントロールしなければならない。」と履き違えているのです。
私は国会議員こそ、国家に忠誠を誓うべきだと思っているし、実行するよう努力いたします。
(8)国花、桜と菊
日本の代表する花は桜と菊です。この2つの花は日本人の精神を形容できると思っています。
桜は潔い生きざまであり、菊は皇室の象徴でもあり、別名よわい(齢)草、千代見草とも呼ばれる長寿であり死生観を表す花だそうです。(郷友連盟の女性の方から教わりました。)
楠木正成の有名な言葉に「七生報国」という言葉があります。七度生まれ変わっても私はまた国のために戦うということです。
日本人の死生観について、ある高名な方が「明るい無常観」であると言われました。日本人としての生きざまを孫の世代に残すこと、そこまで繋いでいくことであると思います。経済という言葉がありますが本来は「経世済民」の略であり、その意味は「世を治め、民を救う」ことであります。目の先だけ、現在生きている人だけの幸せだけではなく、将来の子孫まで引き継がれていくことが一番大切なことではないでしょうか。
私はこの世代を繋いでいく経世家として今後とも頑張っていきたいと思っていますので引き続き皆さまのお力をお願いいたします。
この素晴らしい集いに参加させていただきましてありがとうございました。
○ 質疑(対宇都議員)
Q1 領域警備についての法整備のお願いです。中国の漁民が数百隻で尖閣列島に上陸するという話もあります。是非、宇都先生におかれても引き続き領域警備の法律を通すようお願いいたします。(お願いのみ)
Q2 佐藤正久議員が、「イラク派遣の際は矛盾するミッションを誠実にやっていた。」との話がありました。宇都先生には国益の教育者として頑張ってもらいたいと思いますが所信についてお伺いします。
Ans 佐藤議員とは二人三脚で協力しながら議員活動をやって行きたいと思っております。国会議員にとって一番怖いことは慢心驕りだと思います。先生と言わずに宇都議員、或いは宇都君と呼んでもらいたいと思います。そして正道からずれている場合は遠慮なくご指摘いただきたいと思います。
Q3 中華人民共和国について何故日本の国会議員は「シナ」と呼ばないのか。
2点目は中国政府は度々、国民のガス抜きをやるために反日をやるのだと言われていますが、この対象が何故日本だけなのか教えて欲しい。
Ans シナは英語でChinaと書きますので確かにその通りですね。しかし公式なところで「シナ」と呼ぶべきかは日本として考えなければならないと思います。昔は「シナ」と呼んでいたことを子供の世代が知らないことは問題だと思います。シナソバは知っていても、その由来が判らない子供、その辺を世代に繋いでいく必要があると思います。
もう一つの質問の「何故反日だけが利用されるのか」ですが、戦前のシナ事変で日本に対するプロパガンダが続いていること。もう一つは日本の政治が中国に対して折れてきたということ。日本という国は強く出ると必ず折れるという誤ったメッセージを出し続けてきたということです。どこかのタイミングでその誤ったメッセージを打ち消す必要があり、そのためには政治を代表する総理がその努力をしていかねばならないと思います。
私は宣言しておりますが、死ぬまで靖国神社には参拝しますので、よろしくお願いします。(宇都議員の予定があるため、ここで質問打切り)
4.岡田政典氏時評講演(骨子項目のみ)
(1)最近の危機管理について
・北朝鮮の砲撃事件では自衛隊、海上保安庁、警察から総理大臣に報告が上がってない。
・総理はテレビで情報を知った秘書官から聞き、岡崎公安委員長は登庁もしなかった。
・実働レベルでは官邸、公安委員長に期待していないから報告が届いてないのではないか。
(2)田母神前空幕長更迭について
・更迭された以降、2年経つが、講話、執筆活動等人気が止まるところがない。これは奇跡とも言える。
・それだけ、国民は現政権に対して安全保障の不安を感じているということである。
・この国を救える人のベスト3は土屋たかゆき、水島 総、田母神俊雄である。
・田母神氏の更迭後のパッシングは酷かった。
(3)自衛隊の指揮系統上の問題
・周辺事態法はあるが北朝鮮の砲撃事態に対する管政権は周辺事態ではないと逃げている。
・周辺事態法の内容が複雑である。現場指揮官は判断できない。時期を失してしまう。
・それにも拘らず自衛隊海外派遣活動においては死傷者ゼロであることは奇跡に等しい。
・それは現場指揮官が皆腹を括って対処したからである。
・現状のシビリアンコントロールは「自衛隊の暴力から国民を守ること」と思っている。
・従って、自衛隊の現場指揮官が判断できないようになっている。
・実力組織(自衛隊、警察等)では現場で判断できなかったら有事戦えない。
(4)クラスター爆弾の廃棄について
・11/23の北朝鮮砲撃事件に対する韓国の砲は多連装ロケット砲(12連装)を使っていた。
・陸上自衛隊ではクラスター爆弾を10年以上にわたって装備していた。(10倍20倍の効果がある。)
・福田内閣当時、平和主義に負けてクラスター爆弾の廃棄条約に乗ってしまった。
・五百籏頭防大校長は当時、福田内閣の腹心としてこの廃棄提案をしたことは確実。
・防大校長の立場を考えると、この廃棄提案は相応しくない。
・来年度の予算で廃棄の経費が計上されてしまった。
・最後の手段として国に廃棄を中止するよう働きかけるべきであるが、それが適わなければ廃棄に代わる凍結処理に変更すべきである。(戦前の米軍投下不発弾がいまだに威力を温存しているので凍結処理しても有事の際は有効な戦力となる。)
以上文責稲葉(司会)
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